そこに住む人々の歴史を浴びるおすすめ度
★★★★★
かつて琉球と呼ばれていた頃の、人頭税制度に始まり、太平洋戦争によるアメリカ・日本の二重支配、本土復帰後の困難、離島ゆえの水不足・後継者不足など、今まで観光地としてしか捉えることのできなかった沖縄というものを、より深く理解する為には大変参考になる本だと思います。私も“やまとんちゅ”で、視点はというと、“日本国”からの視点でしかなかったこと、美しい島、ゆったりとした暮らし、三線のしらべなど憧れるものばかりを見つめていた事を認識しました。つらく悲しい過去や、未だ解決されない問題がたくさんある離島ですが、それにもまして底抜けに明るいおじぃやおばぁにまた会いに行きたいと思います。
沖縄が好きなら一度は読んでみてはいかがおすすめ度
★★★★☆
全編を通して暗いです。珊瑚で囲まれた様々な色の海、無数の魚、長寿日本一。そんな明るいイメージの沖縄ではありません。日本で唯一、米軍が駐留する島、戦争の悲劇、構造的な貧困、増え続ける老人ホーム、無医村、今なお多くの問題を抱えています。一方で、大神島の「神の世界」のような沖縄独特の世界もあります。筆者は、有人の島が40ある中で35の島を4年かけて回り、島ごとの暗い過去、現在を淡々と事実に基づき記しています。是非一読をお勧めします。
きれいな海、だけではない沖縄
おすすめ度 ★★★★★
本書の著者は森口 豁さんという間もなく70歳になるジャーナリスト。ドラマ「瑠璃の島」にもなった「子乞い」の著者です。自分がいまなぜ「だれも沖縄を知らない」を読んだかというと、我が国において最も福祉の必要な地域の一つが沖縄だと考えてるからです。自分自身これまでに沖縄には5回ほど足を運んでいてその海の美しさ、食べ物のおいしさといったものにすっかり魅了されていますし、近年、沖縄からやってきてそのアイデンティティで持って活動をする「モンゴル800」や「やなわらばー」といったミュージシャン達にも魅了されています。しかし自分には観光客や本州の沖縄好きが見て憧れるだけではない別の沖縄もあるような気がし続けておりました。今回、この本を読んで、その感じ続けたわだかまりのいくつかが具体的なものとして自分には繋がったのです。本書では沖縄の人達が歴史の中で、そして現在も直面し続ける社会と、福祉と環境の問題が語られます。沖縄の問題は「本土の犠牲問題」ばかりが左翼的に宣伝されております。しかし、沖縄問題を深刻で根深い問題にしている要因として「域内対立問題」、「構造的貧困問題」でもあることが本書を読んではっきり見えてきました。今後、沖縄の福祉と環境を考える上でこの「域内対立問題」と「構造的貧困問題」に立ち向かわなければ解決されないことが多く、それは同時にアジアの辺境でもあり、アメリカの辺境でもある日本全体がこれから迎える未来の問題と通づると僕は思います。
概要
きれいな海、あたたかい人たち。沖縄って、それだけ? 30あまりの離島を巡り、そこでの問題を浮き彫りにしたルポ。アメリカン・グローバライゼーションへの対抗を志す者すべてが共有すべき問題が、ここにある。