針穴への道は長し おすすめ度 ★★★★★
今年(2006)から日本針穴写真協会の会長を務められるという著者の田所美恵子さん、その針穴写真歴は16年に及ぶということです。一瞬のうちに完了する通常の写真撮影と異なり撮影に数十秒を要する針穴写真では、基本的にその数十秒の間静止し続ける被写体が撮影対象となります。瞬間を切り取るのが通常の写真なら、さしずめ針穴写真は悠久の時間を記録するものと言えます。その視点の違いを体に刻むには田所さんも長い時間が必要だったことでしょう。すぐに結果が見えてしまうデジタル写真が主流となった今、撮影にも「待つ(長時間露光)」ことを要求され、現像が仕上がるまでどんな写真になるのか予想もつかないというファジーな針穴写真。独特のソフトかつパンフォーカスな表現も悠久のパリの静物と不思議にマッチしてしまいます。悠久の時間をゆったり構えて記録する。なんとも贅沢な表現ではありませんか。
概要
針穴写真機(ピンホールカメラ)がとらえた、誰も見たことのないパリ。「パリ、もう一つの視点」や「パリのショーウィンドー」、「パリのマルシェから」などをテーマに、不思議な色調でつづるモノクロ写真集。
|