シャンソンの話が面白いおすすめ度
★★★★☆
1970年に文化出版局から出た『ふたりのこいびと−シャンソンと料理』の文庫化。新たに加えられた章がある。
フランス、ドイツでシャンソン歌手として活躍し、帰国後は音楽事務所を設立して世界から歌手や音楽団を日本に呼ぶ仕事をしていた著者。そうした体験を生かし、パリの料理の話、さまざまなシャンソン歌手の話をしてくれている。
前半の料理の部分は月並みだし、現在では時代遅れとしか思えない部分が多い。
後半の音楽の話が興味深い。シャルル・トルネ、ジョセフィン・ベーカーなど高名な歌手との交流が飾らずに描かれており、引きつけられるものがあった。文章では音楽の良さを表現するのは難しいが、著者はなかなか上手にこなしている。音楽の裏に隠れた人間性にも踏み込んでいて巧みだと思う。
こころまでおいしくなる本おすすめ度
★★★★★
昭和45年に書かれたエッセイ(食べることとシャンソンについて)に加筆されたもの。
現代の食生活とは違う部分もありますが、当時にしてはアメリカやフランスの生活を経験した著者の「ハイカラ」な(決して高級趣味ではなく)食のセンスが今でも楽しく読めます。高いものとか流行り物ではなく、自分の好きな食べ物を、自分に合ったスタイルでエンジョイする著者のセンスとゆとりがすてきです。
グルメエッセイにも色々あり、読んでいておなかがすくものと、理知的に「ふーん」と思いながら読むものとありますが、私にとっては、この本は前者。
簡単でおいしくできる料理のレシピもおいしそうだし、料理を通して語られるいろんな思い出も、しんみりしたり、笑ったり、まさに食べ物の中に人生がつまって!います。
後半のシャンソン、そしてそのアーティストたちとの交流も興味深いです。中でもジョセフィン・ベイカーの章は強い感動を覚えるでしょう。
概要
読めば、きっと食べたくなり、作ってみたくなる!食通、料理通でなる著者が綴ったとてもおいしそうで、ちょうぴりシミジミしちゃうW料理+シャンソンWエッセイ集