難解な絵の画家に近づくための入門書おすすめ度
★★★★★
本書は、良さと魅力、斬新さが分かりにくいことで定評の(?)セザンヌをとり上げた本です。本書は「知の再発見」シリーズの1冊で、このシリーズの中にあるモネ、ルノワール、ゴッホ、シャガールといった巨匠の本と同様に代表作と主要作を年代順に収録しています。
特に見所の絵を挙げると、高階秀爾氏の日本語版序文の後に来る絵「赤い岩」(次ページ以降13pまでどんどん絵の一部を拡大して、彼の筆跡を浮き立たせながら、彼の絵についての意見を掲載していく構成は良い)、73pの大胆な「大きな松の木」、複数の視点で見て対象の配置に気を配った静物画、有名な水浴図、サント=ヴィクトワール山になるでしょう(水彩画も捨てがたい)。巻末には他の「知の再発見」シリーズの画家同様に資料が充実していますが、特に本書のものは、一筋縄でいかない画家を扱っているだけに濃い内容になってます。哲学者メルロポンティの考察やセザンヌ本人の語る絵画論、彼の同時代、後継の画家(ピカソ、マティス、ゴーギャン、マレーヴィチ等)の賛辞はセザンヌの絵をより面白く鑑賞するために不可欠です。セザンヌの伝記や画集を読むのも良いですが、本書は丁度良いページ数でしかも質の高い内容になっているので、セザンヌ入門に最適です。
概要
本書は、さまざまの資料を駆使してセザンヌの生涯を辿りながら、つねに作品に立ち帰り、主要な作品を、時に適切な部分拡大図を用いて的確に分析し、歴史的位置づけを試みている点で、バランスのよくとれた信頼できる手引きと言うべきであろう。
内容(「MARC」データベースより)
ルネッサンスからの慣習を打ち破る先鞭者として駆け抜けた画家・セザンヌ。さまざまの資料を駆使してセザンヌの生涯を辿りながら、つねに作品に立ち帰り、主要な作品を的確に分析し、歴史的位置づけを試みる。