本棚にアレと並べたい!おすすめ度
★★★★☆
こちらの画像だと帯がついてないのですが、店頭で見た帯がついている状態は、『澁澤龍彦全集』にそっくり! 澁澤龍彦からジャン・コクトーにはまった身としては、それだけで手持ちの澁澤全集と並べるために買いたくなります。代表作にして名作の3作品に加え、映画館などで観たことのない『悲恋』『ルイ・ブラス』が収録されているのも楽しみ。
星が1個欠けているのは、ブックレットとかの水準も、澁澤全集のように充実しているのだろうか? という懸念から。
淀川長治が愛したジャン・コクトーおすすめ度
★★★★☆
むかしむかし、僕がまだ高校生だったころコクトーの「美女と野獣」を見るために名画座のエレベーターに乗りました。なんとなんとそこには、淀川長治さんがいらして僕に「なにをご覧になるんですか?」とたずねました。「『美女と野獣』です。」とお答えしたところ、「あれはいい映画ですね。」とにっこりほほえまれて、私より先にエレベーターをおりていかれました。(ほんとに実話です)
「美女と野獣」はそれなりにきれいだったけれども、あの淀川長治さんのほほえみがわすれられません。コクトーが大好きだったからあんなにすてきなほほえみを見せてくださったのですね。いま分かりました。
概要
一般的には詩人や画家としての側面が有名なジャン・コクトーだが、映画作家としても多くの傑作を生みだしている。この5作からは、彼が俳優ジャン・マレーと出会ったことで、映画への創作意欲を高めていった過程がうかがえる。
1943年の脚本作『悲恋』は「トリスタンとイゾルデ」の伝説を題材にした物語。愛し合って引き裂かれた男女が、死で結ばれようとする。コクトーが、主演ジャン・マレーの魅力を発見した作品でもある。
1946年の『美女と野獣』はディズニー・アニメと同じ原作で、衣装やセット、幻想的な映像が高く評価された。自身が監督を務めたコクトーは、マレーの絶品の美しさを映像に焼きつけることに執心した。
『ルイ・ブラス』(1947年)はコクトーの脚本作で、当時のフランス映画では破格の製作費をつぎこんだ歴史ロマン。17世紀のスペインを舞台に、平民ルイ(ジャン・マレー)の激動の人生をつづる。
『恐るべき子供たち』(1949年)は、コクトーの小説をジャン・ピエール・メルビルが監督し、コクトーも脚本に参加。強い愛情で結ばれた姉と弟が、他者の介入で関係を崩壊させていく。マレーは出演していないが、コクトー自身によるナレーションが印象深い。
監督作『オルフェ』(1950年)ではギリシャ神話を大胆に映像化。マレー演じる詩人オルフェが死の国の王女に心を奪われる。コクトーの映像美学が際立った、集大成的な作品でもある。
文学や神話と自身の映像芸術の崇高な融合。そして出演俳優への愛。後のアート映画に多大な影響を与えた、耽美的でアバンギャルドなコクトーの作風は、時を経ても色あせない。(斉藤博昭)