東京国際映画祭ヤングシネマグランプリ受賞おすすめ度
★★★★★
ジュネ&キャロの長編デビュー作品です。
暗黒面なコメディーというネガティブになりそうなノリが、意外にセンシブに観れて気持ちよく映画館(シネスイッチ銀座で公開)を後にした記憶があります。
何といっても、カメラワークがとても斬新且つ軽快。
特にルイゾンがプリュスの部屋にベッドの修理にやって来て、テレビから聞こえるハワイアンメロディーにアワせてベッドを軋ませるシーンは印象的でした。
5階建てアパートの住人たちは全員個性的ですが、やはりジャン=クロード・ドレフュス演じるデリカテッセンの親父と、三叉ブーメランを操る主人公のルイゾン(ドミニク・ピノン)が出ているシーンはすべて最高!
実験映画のようなジャンルがお好きな人は、絶対高い評価をしてくれる映画だと思います。
Soylent Greenおすすめ度
★★★★★
まず人間を食用としているところが、「ソイレントグリーン」ですね。
あっちの方が最後に事実が明らかになるのに対して、これは初めから現実であることを表現しています。地底人がいいですね、まともな菜食主義者なのに悪党として、地上の人から迫害をうけている。アメリカとフランスのちがいですね。ラストの近くで主人公とヒロインが危機を脱出するときのシーンは「新動く標的」からの引用でしょうか。最後まではハラハラドキドキとします。持ち主の思いのままに動く投げナイフが効果的に使われています。処女作でこれほど完成度の高い作品とは、ジャン=ピエール・ジュネ監督は天才ですね。
深いけど、理屈抜きに楽しめる傑作
おすすめ度 ★★★★★
私、こういうの好きですね。何度も何度も、この映画は何を言いたいんだろうと考えたものですが、きっと、そんな余計なことをせず、今を楽しみましょうよといわんばかりの映像です。
でも、この映画は深いですよ。フランスが社会主義であるということを前提に置くと、あのわけのわからぬ地底人、ピエロ、肉屋の娘はその体制に反抗する一派とも取れるし、そう考えれば、最後の最後に風呂場から洪水の如くに流れる水に足元をすくわれるシーンも、なんとなく・・・とも考えられましょう。でも、きっとこういう推論は外れでしょうね。否、必要ないでしょう。
いろんな推測が出来、きっとそんな思考を無駄にしてしまうような、何と表現したらいいのでしょうか? とにかく楽しめる傑作です。
罪を憎んで人を憎まず。これを肉屋のオヤジが言うから噴き出してしまいます。まず、何も考えずに映像に身を任せてはいかが?
概要
舞台は核戦争後のパリ郊外のお肉屋兼下宿屋さん。そこの主人は何と下宿人そのものを食用肉として調達しているのだが、そんな折り、ひとりの失業青年(ドミニク・ピノン)が住み込みの雑用係として雇われてきた。しかし、主人の娘(マリー・ロール・ドゥーニャ)が彼を好きになってしまったことから、事態は不可思議な方向へと進んでいき…。
『アメリ』のジャン・ピエール・ジュネ監督が相棒のマルク・キャロと組んで映画監督デビューを果たした、記念すべきSFブラック・コメディ。シュールな世界観と、不気味で滑稽な登場人物、そして愛らしい調べの音楽などなどが巧みにミックスし、ドタバタ騒動の果てに奇妙な余韻を残す快作に仕上がっている。(的田也寸志)