パリところどころは見ていませんが・・ おすすめ度 ★★★★★
今か今かと待ち望んだアデュー・フィリピーヌがDVD化されることに驚きを隠せません。以前に、ある映画祭で目にした事のあるこの作品、どこにでもあるような映画であって、どこにもない。何かに例えられるようで何にも例えられない。こうとしか言いようが無い、アデュー・フィリピーヌはアデュー・フィリピーヌである。 物語の中でイタリア男が出てくる。彼の登場により、映画の雰囲気が変わる。だが、決して世界観が崩れることは無い。彼は声高らかに唄う。イタリア語の陽気さ、美しさは他のどの言語より比類が無い。 これ以上、内容に触れる気は無い。後は、ぜひ見ていただきたい。処女作において絶対的な名作。はっきり言ってみなきゃ損!!
概要
ジャック・ロジェの『アデュー、フィリピーヌ』は伝説的なヌーヴェル・ヴァーグの傑作である。70年代の終わりに翻訳が出た評論集『わが人生、わが映画』のなかで、フランソワ・トリュフォーが、「一見まったく無意味にとらえられた事柄の断続的なイメージのつらなりと、そこについにわたしたちの心をとらえてしまう抗しがたい魅力を生みだすリアリティの密度とのあいだの均衡にはちょっと言葉では言いつくせない天才的なものさえある」と絶賛した一文を読んで以来、この幻の未公開作を渇望するシネフィルは数多いたはずである。実際、兵役を間近にした青年と仲良しの女の子ふたりが知り合い、コルシカ島でのひと夏のバカンスを、他愛ない嫉妬と友情の鞘当てをからめて、まるで騒々しい子供の悪戯書きのようなタッチで仕上げた、この映画の永遠のみずみずしさは分析不可能といえよう。『勝手にしやがれ』のアナーキーな虚無も、『ローラ』の運命論的なロマンティシズムも、『大人は判ってくれない』の悲痛な孤独もここにはない。しかしアドレッセンス特有の頼りない無為感をこれほど繊細に掬いとった映画はほかにない。トリュフォーが主演者たちにインタビューした8分の予告編も素晴らしい。『パリところどころ』はヌーヴェル・ヴァーグの6人の監督によるオムニバスだが、ジャン・ルーシュの『北駅』が突出した傑作だ。夫と気まずい喧嘩したまま出勤した女性が遭遇する、残酷で意想外な結末には、胸を突かれる。あとはゴダール演出の、婚約者と愛人への手紙を封筒に入れ間違えて投函したと勘違いするヒロインの顛末を描くコントが印象に残る。ジョアンナ・シムカスが『ウィークエンド』のミレーユ・ダルクに似ており、悪意たっぷりにいたぶられるのも、またそっくりで可笑しい。ゴダールの女性嫌いがあらわになった一編だ。 (高崎俊夫)
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