スピッツのアルバムの集大成とも言うべき抜群の完成度を持った傑作アルバム。草野正宗の声、曲、歌詞、どれも取っても極上の出来上がりで文句無い。それでも最高と呼べないのは、癖の強すぎた前作「隼」がインパクトあり過ぎた為で、事実上はスピッツの最高傑作なのだろう。
「夜を駆ける」から始まる幻想的な風景の中に徐々に引き込まれていくと、その先には広過ぎる世界観が拡がっている。「水色の街」のような静かなバラードから、「さわって・変わって」や「エスカルゴ」のような乗りのいい曲たちまで多彩。彼等の才能とセンスをそのまま曲に編集し直したようなあまりに盛り沢山なアルバムだ。最後には「けもの道」でオヤッと思わせる前振りから見事なフェイクを掛けて見事なエンディングを見せてくれる。
隼は「異端」の最高傑作とすれば、これは正真正銘、正統派の最高傑作と呼んで申し分ないだろう。
UKロックファンとしてのスピッツおすすめ度
★★★★★
何名かの方が指摘しておられた通り、UKニウウエイブ、U2等が好きだったんだなあ、と一聴して分かる音である。某ロック雑誌のインタビューで草野氏が発言していた通りだ。自分の「音」に真正直な音が全編に渡って鳴らされている。だからと云って「単なるUKコピー」と「非個性的だと短絡して頂くと困る。
草野氏の声および詩世界は独自のモノであり、それを十全にバックアップするべく「バンド」としての音が鳴らされている。これは曲想の違いはあれ全曲そうなのだ。ニウウエイブからネオアコまで、スピッツ色に染められた音を「バンド」だけでも鳴らしている。
そこに草野氏の歌詞と声が乗る。
個性的でないワケがないのだ。
そこに「必殺のサビ作成能力」が加わる。「さわって・変わって」「けもの道」なんてところは典型的だ。
またこれは指摘されていないところなのだが、三輪氏のギターもかなり特異である。ジミーペイジはテレキャス使いであったが、レスポールをステージギターとして、テレキャスの最も太い音を打ち出していた。三輪氏はその逆をいっているように感じる。レスポールをメインとしながらテレキャス的な切れの良さ(って、インディんときはテレキャスだったんだが)をカマしている。
蛇足になるが、リズム隊の多様さ&ロックらしさ(ベースのフレージングなんて心ある高校生ベーシストにコピーを勧めてしまいたいくらいだ)もすばらしい。
四の五の書いてしまったが、単純に良質なロックアルバムである。上述したタワゴトが「ロックファン」がスピッツを聴いてくれるきっかけになってくれれば幸いである。
それにしても。スピッツの「必殺のサビ」の気持ち良さといったら!
クスリに頼って出社せざえるを得ない時に「けもの道」をフルリピートでかけながら道のりを歩むと無根拠な気合いを引き出してくれる。
コレはスピッツ革命だ
おすすめ度 ★★★★★
挑戦的な方法で新境地を開いた前作「隼」。
それに続く「三日月ロック」はまるでスピッツの原点に返ったような正攻法で攻めてきた。
まぎれもない大傑作。
私はCDを買って初めて聴くときは、まず一通りさらっと流して聴いてみるのですが、このアルバムはそれをさせてくれなかった。
1曲目の「夜を駆ける」にガツンとやられてしまい、この曲だけとりあえず3回ほど聴いてしまったのです。
まるで映画のようなシチュエーションの、今までのスピッツにはなかったような世界を描いた曲。
あの瞬間、私は確かに震えてた。
とんでもない傑作を前に、怖くなってしまった。
このアルバムの魅力を語ったらキリがない。
だから1曲目の衝撃を伝えるだけで十分。
あとは私があれこれいうより、一人一人に肌で感じてほしいです。
概要
2002年で結成15周年を迎えた男性4人組バンドのスピッツが、前作『ハヤブサ』から約2年ぶりにアルバムを発表(通算10作目)。
開放感あふれるメロディの<7>(カルピスCMイメージソング)、恋人に会いに行く胸の高鳴りを歌うミディアムバラード<2>(亀田誠治共同プロデュース)の先行同時リリースシングル2曲や、夢に向かって飛び立つピュアなハートを描いた2001年の大ヒットチューン<10>に加え、ダンサブルなビートが響く<5>、爽やかなカントリーテイストの<8>など、力強いハイトーンヴォイスと軽快なポップサウンドが心地いい清涼感を運んでくれる。(北崎みずほ)
曲目リスト
1.夜を駆ける
2.水色の街
3.さわって・変わって
4.ミカンズのテーマ
5.ババロア
6.ローテク・ロマンティカ
7.ハネモノ
8.海を見に行こう
9.エスカルゴ
10.遥か (album mix)
11.ガーベラ
12.旅の途中
13.けもの道